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2021.03.31
移住創業者ストーリー
- 投資銀行から、起業の世界へダイブ!
新進気鋭のバイオベンチャーが切り開く医療の未来
新進気鋭のバイオベンチャーが切り開く医療の未来
(オプティアム・バイオテクノロジーズ株式会社)
まるでドラマ?!キャリアを突き進んできた先に、辿り着いた「実業に関わりたい」という想い。
まず、現在取り組んでいる事業について教えてください。
オプティアム・バイオテクノロジーズは、愛媛大学発のベンチャー企業です。遺伝子改変技術を応用し、免疫治療効果の高い抗体を効率よく作製できる「Eumbody System™」と言う新技術を開発しました。この技術によってCAR-T細胞の機能を最大化させ、難治性がんの医薬品開発に挑んでいます。
また、私たちは愛媛大学発のベンチャーとしては初めて医学部に拠点を置いており、創薬シーズの社会実装に向けて、製薬会社を含めて連携を進めています。
どのようにしたら、このように技術に優れたバイオベンチャーが生まれるのか大変興味があります。ぜひ、西岡さんのこれまでの生い立ちについて教えてください。
生まれは東京ですが、ノルウェーやベトナム、スウェーデンで育ちました。高校卒業後は日本に帰国し一橋大学商学部に入学、そして野村證券に就職しました。
初めての赴任先は横浜駅西口支店で、営業を3年経験し、投資銀行部門に異動。ここからヘルスケアセクターのカバレッジ業務に従事することになりました。上場製薬会社やバイオベンチャー、化学、医薬品卸、介護など、様々な企業のM&A・資金調達をお手伝いする日々を8.5年間過ごしました。
素晴らしいキャリアですね!そこから、なぜ起業の道へ進もうと思われたのですか?
2年ほど前に「次のキャリアを描いても良いかな」と思い始めたのがきっかけです。当時、投資銀行マンとしては楽しかったのですが、やはり実業に関わりたい…と。日々、お客様として事業会社と接している中で、そこに立場を変えたいという想いが強くなっていきました。
最初は、バイオという分野や企業規模にかかわらず「ベンチャー系の面白い会社」と考えていたのですが、友人をはじめ様々な人と話し、壁打ちを行う中で方向性が絞り込まれ、最終的にANRIというベンチャーキャピタル(VC)の宮﨑 勇典さんに出会いました。
宮﨑さんから色々な事業機会を紹介していただき、その中に、愛媛大学の越智俊元先生より「研究成果を社会実装したい」ということで、共同創業者としてのオファーがあったのです。
先生の技術について「これは面白そうだ」と直感し、2019年の夏に初めてお会いすることに。お話をする中で「この先生と一緒に事業を創りたい」という想いがより一層強くなりました。
そこからは準備を着々と進め、一年後に野村證券を退職。2020年6月付で創業に至ります。
技術を信じて突き進むベンチャーの世界。社名である「OPTIEUM」に秘められたメッセージとは?
なるほど、そのような創業の仕方もあるのですね。話題に挙がりましたベンチャーキャピタルからは、どのような支援を受けているのですか?
創業してすぐはVCからの支援がないと辛いので、まず「1年走れるお金を入れて欲しい」と交渉し、その資金でできるところまでやってみる、といった感じですね。
大学連携のベンチャー企業について詳しくお聞きしたいのですが、どのような組織体系になっているのでしょうか?
オプティアムには学内に「研究開発チーム」がいて、越智先生にはチームの研究監修やアドバイザーをしていただいています。また、医学部内に拠点を置くバイオベンチャーですので、愛媛大学内のさまざまな先生方、スタッフの方々から研究環境のご支援を頂いています。「Eumbody System™」は、新しい観点でCAR-T細胞の機能強化を図る技術で、今のCAR-T細胞の持つ課題を解決する発想としてとても面白く、社会的意義もあり、広がりもあると確信しています。現在、製薬会社との連携を進めているところです。
実は、社名であるオプティアム(OPTIEUM)は、免疫療法を最適化すると言う意味の『Optimized Immunotherapy』と、Ehime University School of Medicine(愛媛大学 医学部・医学系研究科)の略である『EUM』を掛け合わせた言葉で、「愛媛大発のバイオベンチャーとして愛媛からこの産業を盛り上げる!」と言う想いを乗せているんですよ。
そうだったんですね!信頼関係と、技術を信じる気持ちの上に立って事業を進められているということがよくわかりました。創業してまだ1年経っていない状況ですが、これまで何が一番大変でしたか?
何よりも、研究者の採用が難しいですね。ビジネスのためには、例えば製薬会社の第一線で働いている方などに入社していただきたいのですが、なかなか見つけるのが難しかったです。知識もありベンチャースピリットを持っている研究者が、そもそも少ない中で、もしいたとしても設備や機会が整っている首都圏に人材が集中してしまっていて…。
オプティアムの研究室は、愛媛大学医学部のラボを間借りしている形なので、興味を持っていただいたとしても、移住が必要となると「家族が…子供が…」ということで、断念される方も数多くいました。
それは、一般的な企業だと、なかなか経験しない悩みですね…。
とにかく、多くの知人に紹介をお願いし、何社もエージェントと契約し、紹介を促してもらって、希望者と話をして、を繰り返しました。本当に大変でしたが、最終的に、とあるエージェントから「この人にどうしても入ってもらいたい!」という方を紹介していただき、ようやく出会うことができました。採用には、かれこれ9ヶ月かかりましたね。それだけ大変でした。
大学発ベンチャーという選択肢は可能性あり。全部事業化するくらいの気持ちで、チャレンジを!
今後について、新たに計画しているチャレンジなどはありますか。
まずは、製薬会社との契約を進めていきます。当面の間、第一優先は、がんの医薬品開発ですが、私たちの技術はがん以外への展開も見据えています。
その中で、自分たちの創薬パイプライン(※オプティアム社が自社で持つ「薬の種」)を確立させたい。製薬会社との共同開発も然り、自社パイプラインの創出然り、より一件でも多く、薬になるものを増やしていきたいですね。
後に続く移住者や起業家に、メッセージをいただけますか。
大学の中の技術シーズには、面白いものがたくさんあります。ベンチャーキャピタルとの相性や縁もありますが、もし特許をとることを目指すなら、全部事業化するべく考えてみても良いかもしれませんよ。スケールするかしないかは、やってみないとわからない。ビジネスをサポートしてくれる人とタッグを組んで起業するのは、とても面白いと思います。どんどん会社を作っていってもらえたらと思います。
2020年6月30日に創業した愛媛大学発のベンチャー、オプティアム・バイオテクノロジーズ株式会社。2018年度の「愛媛大学学長特別強化経費事業」で、ベンチャー企業の事業化を目的とした『産業支援強化事業』の採択を受けており、今、愛媛のみならず全世界からが期待と注目が集まっています。難治性疾患治療に役立つ抗体医薬品の開発を視野に入れ、優れた人材を集める同社の取り組みについて、代表取締役である西岡駿さんにお話を伺いました。